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風まかせの種子の旅 -種子散布のはなし❷-

動くことのできない植物は、自分の生命情報を種子にたくして、自分が生育している場所からできるだけ種子を遠ざけようとします。いったいなぜでしょう?

それは、同じ場所で種子が生育しようとしても、光や水の取り合いになってしまい、親植物にも種子にも、生きていくことでマイナスになってしまうからです。


種子散布のひとつに「風散布」があります。その名の通り、風を利用して種子を遠くへ旅立たせる方法です。この風散布には、大きく分けて3つの方法があります。


細かい毛を使って風にのる方法で、タンポポやテイカカズラなどが有名です。

微細な種子を風に漂わせる方法で、シランなどのラン科植物に多く見られます。

ここで紹介するプロペラ式の「翼」をもつもので、風に飛ばされる方法です。

総苞葉の翼をもつボダイジュの実

実は総苞葉と果序の柄が融合している


とてもユニークな姿をしたボダイジュの実。強い風が吹くと、実は枝から離れて、翼の役割をする総苞葉とアンカーの役割をする果序の先についた丸い堅果とのバランスが相まって、くるくると回転しながら、ときには数十メートルも離れた場所まで飛んでいきます。

高い場所に実ったダイオウショウの松っぼっくり

ダイオウショウの松ぼっくりと薄い翼をもつ種子


マツ類のなかでも、20cm以上もの大きな松ぼっくり(球果)を実らせるダイオウショウ。松ぼっくりが乾いて種鱗が開くと、薄い翼をもった種子が姿を現します。そのため、からっかぜの日に、ダイオウショウを見上げていると、ものすごいスピードで回転して飛んでいく種子が観察できます。

枯れた葉っぱのように見えるアオギリの実

ボートのような形をした実の縁につく種子


枯れ葉に種子がくっついたように見えるアオギリ。じつは枯れ葉ではなく、実が裂けたもので、縁には茶色い種子が数粒ついています。アオギリの実は、ちょっとやそっとの風では飛ばず、強風でないと飛びません。これも、親植物からより遠くて旅立たせる工夫なのかもしれません。実は種子を下側にして、回転しながら飛んでいきます。


ここで紹介した3種の翼をもつ「風散布」植物には、似た特徴が見えてきます。それは、「背が高く、種子(実)をたくさんつける木」です。


それもそのはず、風を利用して種子を遠くに飛ばすためには、背が高い方が有利ですし、風まかせに種子を飛ばすので、たくさん種子をつくったほうが、生育に適した環境に種子が落ちる可能性が高まるからです。

(pöllö=ポッロ)


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種子散布って?

植物は根をはり、成長してしまうと、その場所から移動することができません。そこで、種子(タネ)をはこび、なかまを増やします。植物自身が種子をあちこちに広げることを「種子散布」といいます。種子散布の方法はいろいろあります。


種子の散布方法

  • 動物散布 くっついて運ばれる付着型と食べられて運ばれる被食型。

  • 風散布  風によって運ばれる。

  • 水流散布 水流によって運ばれる。

  • 水滴散布 雨粒などの水滴によって飛ばされる。

  • 自動散布 果実や種子が自動的にはじき飛ばされる。

  • 重力散布 果実や種子が落下する。


分 類 / アオイ目 アオイ科 シナノキ属

和 名 / ボダイジュ

学 名 / Tilia miqueliana

高 さ / 8-10m

花 期 / 6月

生活型 / 落葉高木

分 布 / 公園木(中国原産)


分 類 / マツ目 マツ科 マツ属

和 名 / ダイオウショウ(ダイオウマツ)

学 名 / Pinus palustris

高 さ / 20-30m

花 期 / 4月ごろ

生活型 / 常緑高木

分 布 / 公園木(北アメリカ原産)


分 類 / アオイ目 アオイ科 アオギリ属

和 名 / アオギリ

学 名 / Firmiana simplex

高 さ / 15-20m

花 期 / 5-6月

生活型 / 落葉高木

分 布 / 公園木(伊豆半島・愛媛県・高知県・大隈半島・琉球列島に自生)

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