色とりどりの葉が、鮮やかに森を染める春。そこへ差し色としてヤマザクラの花が入ると、森はパッと明るい表情になり、まさに「山笑う」という季語がぴったりです。
春の森の空中散歩
樹木の上部が茂るようすを「樹冠」と呼びますが、この樹冠を上空から見ると、コナラやニレ類などの落葉樹(冬に葉を落とす)の芽吹きと、アラカシやタブノキなどの常緑樹(冬でも葉がある)の新葉が、パッチワーク状に浮かび出し、個々の樹木が我先にと光りを求めて、陣取り合戦をしているのがよくわかります。
俯瞰で見た春の林冠
高木の枝葉が占有する、林の上部空間を「林冠」と呼びます。そこは高木層の世界で、この林冠の隙間から、わずかにもれ落ちる光りを利用する植物の世界が低木層です。
*草本層や蘚苔層などもあり、植生による階層構造が構築されている。
森の中を散策すると、時折、林冠の隙間を縫うようにして、林床まで落ちるわずかな光りで生育するウツギ類やコマユミ、コナラやケヤキの若木を見ることができます。人にとっては「山笑う」季節かもしれませんが、植物にとっては……森の上でも中でも下でも、生き残るためや次世代を残すための、命のせめぎ合いがはげしくおこなわれているのです。
(pöllö=ポッロ)
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