神奈川県にある谷戸山公園で……ランウェイを歩くファッションモデルがいました。
間違えました。柵の上を歩くアリでした
日本でも約300種類確認されているアリの中でも、ひときわカッコいいこの種の名前は「トゲアリ」といいます。赤く目立つ胸部と腹柄節(胸部と腹部をつなぐ節)には、その名の通りトゲトゲがあります。このトゲは攻撃用ではなく、弱点であるキュッとしている部分(頭部と胸部の間、胸部と腹部の間)を守るために活躍します。
長い脚も美しい
イカツイ見た目からも世紀末を強く生きていそうですが、実はその生態こそ世紀末。トゲアリの新女王は、クロオオアリやムネアカオオアリの巣を乗っ取る「一時的社会寄生」をします。乗っ取った巣のアリたちにトゲアリの子どもを育てさせて、いずれはトゲアリだけの巣にします。
*「一時的社会寄生」とは交尾の終えた新女王が他のアリの巣に侵入して女王を殺し、その巣のアリに自分の子どもを育てさせることです。巣を乗っ取られたアリはいずれ寿命で死に、侵入者だけの巣になります。
【トゲアリの乗っ取り作戦】
トゲアリの新女王は働きアリほど大きくはないですがトゲを持っています。巣に侵入する際に敵だとバレない様に同じ匂いにするのですが、その方法が大胆かつパワフルです。
①侵入する巣のアリの首に噛つき匂い付けをします。同じ匂いになることで巣の一員だと誤認されます。
②嚙みついたまま、巣まで運んでもらい侵入します。運ばれている道中でも、異変に気付いたアリに攻撃されますが、トゲで体を守ります。
③自分よりも二回りも大きい女王アリを殺して、巣を奪います。
成功確率はかなり低いようで、働きアリにやられたり、巣に侵入できても女王を倒せないことが多いようです。来年はトゲアリの一時的社会寄生を見てみたい。
下の写真の2枚目、集合体恐怖症の人は注意です。
禍々しい腹柄節のトゲがオシャレ
トゲアリは木のうろに巣をつくります。ものすごい数のトゲアリが密集していて、圧巻の光景です。トゲアリは木の樹皮や柵の上を歩く姿を見ることが出来ます。働きアリがいたら、近くに巣があるかも知れないので、周りの木のうろに注目してみてください。
ちなみに、トゲアリを生で食べたことがあるのですが、腹柄節のトゲは歯をがっちり嚙み合わせないと砕けないほど硬かったです。味は、プチっとした後に蟻酸の独特な酸味が広がります。
世紀末を生き抜く無法者のように、強く賢いトゲトゲな「トゲアリ」はかっこいい。
(はかせ)
分類 / ハチ目 アリ科 トゲアリ属
和名 / トゲアリ
学名 / Polyrhachis lamellidens
体長 / 7-8mm
分類 / 本州〜九州・対馬・屋久島・朝鮮半島・中国
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