pöllö=ポッロが秋になると特に注目するのは、植物の実とタネです。
下の画像のヤマボウシとハナミズキは、春から初夏にかけて、花びらに見える4枚の総苞(葉が変化したもの)を広げ、人びとの目を楽しませてくれます。ちなみに、実際の花は小さく(小花)、中央に複数が集まって咲きます。
ヤマボウシ(左)の花期は5-6月でハナミズキ(右)の花期は4-5月
山林内に生えるヤマボウシは日本の固有種で、街路樹や庭木に利用されるハナミズキは北アメリカ原産の園芸植物です。
出身が違う2種ですが、とてもよく似ています。それもそのはず、ヤマボウシとハナミズキは同じヤマボウシ亜属に分類される近縁種だからです。
flora(植物相)では、同じ全北植物区系界の植物なので当たり前なのかもしれませんが、日本とアメリカは地理的には太平洋を挟み、そこそこ遠く離れています。なのに近縁種って、面白くないですか。
簡単にお話すると、昔むかし、かつて地球が温暖な時期に、ヤマボウシとハナミズキに進化した共通の祖先が生まれました。時が経ち、地球が寒冷化(氷河期)をくり返す時代に暖かい場所を求め、一方はアジアへ、もう一方はアメリカへと南下し、こうして離ればなれの地域近縁種ができたのです。
枝先についたヤマボウシ(左)とハナミズキ(右)の実
上の画像は、ヤマボウシとハナミズキの実です。花は似ていますが、実を見るとだいぶ形状が違います。
ヤマボウシは複数の小花が集まった集合果で、ハナミズキはひとつひとつの核果が数個ずつ集まるという違いがあります。
ヤマボウシ(左)とハナミズキ(右)の実
ヤマボウシ(左)とハナミズキ(右)のタネ
ヤマボウシは赤く熟れた実を食べると美味しく、喩えるなら薄味のマンゴーという感じかしら。それに比べ、ハナミズキはとにかく苦い……だけ。
このことからわかるのが、ヤマボウシは哺乳類(鳥も食べる)に実を食べてもらい、タネを運んでもらう方向へ進んだ植物で、ハナミズキは赤く目立ち、鳥に食べてもらい、タネを運んでもらう方向へ進んだ植物なのでしょう。
ヤマボウシの実は、ニホンザルが好んで食べると聞きます。ヤマボウシは、哺乳類に食べてもらいたくて、サル類のいない北アメリカ原産のハナミズキは、鳥に食べてもらいたいのかもしれませんね。
分 類 / ミズキ目 ミズキ科 ミズキ属
和 名 / ヤマボウシ(山法師)
学 名 / Cornus kousa subsp. kousa
花 期 / 5-6月
生活型 / 落葉中高木
分 布 / 本州〜九州・琉球諸島
分 類 / ミズキ目 ミズキ科 ミズキ属
和 名 / ハナミズキ(花水木)
学 名 / Cornus florida
花 期 / 4-5月
生活型 / 落葉高木
分 布 / 北アメリカ原産
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