この時期に野外で見かけるハチ類には、金属光沢をもつ美しい狩りバチと寄生バチが複数種います。その中でも、飯能市でよく見かける4種を紹介します。
見た目が美しい昆虫は、それだけでも魅力的で人気がありますが、個人的には、生きもののくらしっぷりに魅力を感じるので、これら4種のおもしろい生態に興味津々なのです。
ヤマトルリジガバチは6月上旬から飯能市で見られる
ヤマトルリジガバチはクモ類を捕らえる狩りバチで、狩ったクモ類を幼虫の食糧にします。
巣は竹筒(ドロバチ巣を再利用することもある)を利用しますが、竹筒の中に幼虫一頭に一部屋用意されています。おもしろいのが、この部屋の区切り(壁)に鳥のフンを利用することです。竹筒を割って確認したことがありますが、白い漆喰の壁のようでした。
ちなにみ鳥のフンの白い部分のことを、以前はおしっこ(尿酸)だと考えられていましたが、放射線を使った研究が進んだ結果、尿酸ではないことが明るみになりました。
わざわざヤマトルリジガバチが鳥のフンを利用する理由、気になりますね。
サトセナガアナバチは5月下旬から飯能市で見られる
サトセナガアナバチはゴキブリ類の幼虫を捕らえる狩りバチで、狩ったゴキブリ類の幼虫を子どもの食糧にします。
毒針を刺してゴキブリの幼虫を仮死状態にすると、触角をくわえて操り、巣穴まで運びます。観察していると、ゴキブリはサトセナガアナバチのなすがままに……まさにゾンビ。
海外のエメラルドゴキブリバチと同属で、同じようにゴキブリをゾンビ化して操ります。
サトセナガアナバチは外来種で、ゴキブリと共にやってきたと考えられています。飯能市では2018年、アカマツの古木の樹皮上ではじめてゴキブリの幼虫を引きずっているのを見かけて以来、2022年にはふつうに観察できるようになりました。
クロバネセイボウは7月上旬から飯能市で見られる
クロバネセイボウは、ヤマトルリジガバチの巣に卵を産み付ける寄生バチです。
花を訪れる姿をよく観察しますが、竹筒などの巣内で育つヤマトルリジガバチの幼虫に寄生するので、ヤマトルリジガバチを観察しているとしばしば見かけます。
共に美しい瑠璃色をしたハチ同士ですが、寄生するセイボウ(青蜂)の方が鮮やかです。
オオセイボウは6月下旬から飯能市で見られる
オオセイボウは、トックリバチやスズバチの巣に卵を産み付ける寄生バチです。
上記のクロバネセイボウのように、開けた草原などで訪花する姿をよく観察します。オオセイボウが寄生するシーンは今まで観察したことはありませんが、草原でトックリバチの巣もよく見かけるので、いずれは観察したいものです。
4種の姿が美しいハチたちですが、やっぱり生態観察が楽しいね。
分 類 / ハチ目(膜翅目) アナバチ科
和 名 / ヤマトルリジガバチ(ルリジガバチ)
学 名 / Chalybion japonicum
全 長 / 15-20mm
分 布 / 本州〜九州・沖縄
分 類 / ハチ目(膜翅目) セナガアナバチ科
和 名 / サトセナガアナバチ
学 名 / Ampulex dissector
全 長 / 14-18mm
分 布 / 日本各地
分 類 / ハチ目(膜翅目) セイボウ科
和 名 / クロバネセイボウ
学 名 / Chrysis angolensis
全 長 / 10-13mm
分 布 / 本州〜九州・沖縄
分 類 / ハチ目(膜翅目) セイボウ科
和 名 / オオセイボウ
学 名 / Stilbum cyanurum
全 長 / 12-20mm
分 布 / 本州〜九州・沖縄
Comments