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記事: Blog2_Post
執筆者の写真pöllö=ポッロ

ケモノの足跡が楽しい!

小生がフィールドワークをする上で、もっとも楽しみにしている目的のひとつが、「しわざ」探しです。


「しわざ」とは、いわゆる生きものが残した「フィールドサイン」のことで、ケモノでいえば、食べ痕・排泄物・巣・足跡などのこと。すなわち「生きもののくらしの証」です。


その「しわざ」の中でも、とくに大好物なのが「足跡」

なぜなら、博物学者のアーネスト・トンプソン・シートンの言葉を借りると「足跡を見つけたら、その動物が生きている限り、その足跡のつながりの一番先には、必ずその動物がいる」からです

左がタヌキの前足(下)と後ろ足(上)で、右がノネコの前足(下)と後ろ足(上)


1月6日、都内で数年ぶりにそこそこの積雪があった日、飯能でも午前中から夕方にかけて雪が降りました。夕方には雪が止んだということは、夜のうちにケモノが足跡を残した可能性が高い……ということで、7日の朝一番で足跡探しに出かけてきました。


雪がそれほど積もらなかったので、足跡のディテールがよくわかる、ベスト積雪量!

さっそく見つけたのが、タヌキとノネコの足跡(指行性)

並んだ2種の足跡をながめると、それぞれの特徴がよくわかります。


2種とも前後足4本の指の痕(前足は5本指だが親指が高い位置にあるため地面につかない)が残りますが、タヌキなどのイヌ科動物の場合、指の先に爪の痕が残ります。それに対してネコ科動物の場合、ふだん爪をしまっている(チーターなど例外もある)ので、極度に滑りやすい環境などで爪を立てる必要がない限り、爪の痕が残ることはまれです。

散歩で人の靴跡と並んだイヌの足跡


イヌ科動物はタヌキ以外にキツネがいますが、もちろん飼いイヌだってイヌ科動物です。そのため、フィールドでタヌキやキツネらしき足跡を見つけたときに、それが極端に大きかったりすれば、イヌのものだとわかります。しかし、サイズや形状がタヌキやキツネに似ていると、「あれ?」と惑わされます。でも、近くに並んだ人の靴跡が見つかれば、散歩中のイヌの足跡だとわかります。

キツネは前足と後ろ足の足跡が重なる


これは、イヌ科動物のキツネの足跡(指行性)

キツネは、前足の指の痕の上に、後ろ足の指をのせて歩行するため、重なり合った足跡になります。ちなみに、ぽっちゃりしたタヌキの足跡と比べると、キツネの足跡はほっそりした印象で、歩行パーターンも、タヌキがジグザグなのに対して、キツネは直線です。また、指球の位置で、イヌではないとわかります。

ニホンテンの足跡(上から右前足・左前足・右後ろ足・左後ろ足)


これは、イタチ科動物のニホンテンの足跡(踵行性)

この足跡のヌシは、道路脇の縁すれすれを歩いていたようで、高所が苦手な小生としては「さすがテン!」と、羨望の眼差しです。ニホンテンはイヌ科動物と違って、前後足とも5本の爪と足裏の痕を残します。また、足裏に毛が多いので、馴れれば間違うことはありませんが、歩行パーターンによっては、ノウサギの足跡(踵行性)と似ていたりもします。

ニホンリスの足跡(上が左右後ろ足で下が左右後ろ足×2)


これは、リス科動物のニホンリスの足跡(踵行性)

前足4本、後ろ足5本の爪と足裏の痕を残し、画像のような跳躍歩行した状態のものが見られます。ニホンリスは昼行性なので、この足跡のヌシは数時間以内に、ピョンピョンと道路を跳ねて移動していたのでしょう。樹上生活者のニホンリスは、地表にあまり足跡を残すことがないので、嬉しい発見!

ニホンジカの足跡(上から左前足・右後ろ足・右前足と左後ろ足が重なる)


これは、偶蹄類のニホンジカの足跡(蹄行性)

他の足跡と違い、ニホンジカは蹄の痕です。道路でよく見かけるのはニホンジカの足跡ですが、イノシシやニホンカモシカも偶蹄類なので、蹄の痕を残します。偶蹄類は、主蹄や副蹄などのつきかたで、見分けたりしますが、環境こみで考察する必要があります。


1時間ほどのフィールドワークでしたが、たくさんの足跡観察をすることができたので、大満足の「しわざ」探しでした。


3月、多くのケモノが観察できるフィールドで、「しわざ」探索エコツアーを開催予定です。足跡もふくめ、さまざまなケモノの「しわざ」が楽しめると、嬉しいね。

(pöllö=ポッロ)


分 類 / 食肉目(ネコ目)イヌ科 タヌキ属

和 名 / ホンドタヌキ(タヌキ)

学 名 / Nyctereutes procyonoides viverrinus

頭胴長 / 50-60cm

尾 長 / 15-25cm

体 重 / 4-10kg

分 布 / 本州〜九州


分 類 / 食肉目(ネコ目)イヌ科 キツネ属

和 名 / ホンドキツネ(キツネ)

学 名 / Vulpes vulpes japonica

頭胴長 / 52-76cm

尾 長 / 26-42cm

体 重 / 4-7kg

分 布 / 本州〜九州


分 類 / 食肉目(ネコ目)イタチ科 テン属

和 名 / ホンドテン(ニホンテン)

学 名 / Martes melampus melampus

頭胴長 / 40-50cm

尾 長 / 17-23cm

体 重 / 0.8-2kg

分 布 / 本州〜九州


分 類 / 齧歯目(ネズミ目)リス科 リス属

和 名 / ニホンリス

学 名 / Sciurus lis

頭胴長 / 18-22cm

尾 長 / 15-17cm

体 重 / 210-310g

分 布 / 本州〜九州(近年九州では確認がない)


分 類 / クジラ偶蹄目 シカ科 シカ属

和 名 / ホンシュウジカ(ニホンジカ)

学 名 / Cervus nippon centralis

体 長 / 90-200cm

肩 高 / 130-160cm

体 重 / 50-85kg

分 布 / 本州〜九州

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