あたたかな季節になり、昆虫もだんだんと姿を見せ始めています。石をひっくり返すと、さまざまな生きものがいることがわかります。ミミズやジムカデからもっと小さな生きものまで...
ときには、アリが巣を作っていたりするのですが、よーく見てみるとアリ以外の生きものがいることがあります。そのようなアリとくらす昆虫のことを「好蟻性昆虫(こうぎせいこんちゅう)」といいます。
今回紹介するのは、こちらの好蟻性昆虫。
アリヅカコオロギの一種
蟻塚(ありづか)のコオロギとかいて「アリヅカコオロギ」といいます。翅のない丸い体に長くはない触角が特徴です。
アリの巣の中でくらし、アリの運んだ昆虫やアリの幼虫を食べていると考えられています。種類によっては口移しで食べ物をもらう種もいるそうです。
しかし、アリでもないアリヅカコオロギがなぜ攻撃されないかというと、同じ匂いになるためです。
ドアップ!まるい体にたくましい後肢がたまらん。
アリは匂い(詳しく言うと炭化水素)で仲間を判別しています。アリヅカコオロギはアリに近づき匂いを体につけることで、同じ仲間だと誤認させます。そのため、姿が違っていても巣の中を比較的安全に動き回ることができます。
ときには匂いが薄れて攻撃されることがあるそうですが、こう見えても動きはすばやく、もし外敵だとばれても逃げることができます。
しかし、なんともまるっこい体。個人的には、朱色の尾葉(おしりのツノのようなもの)がチャーミングです。尾葉には空気の動きを感知する感覚毛が多く生えていますが、ほかの地表にいるコオロギと比べても発達していそうです。やはりアリの巣のように暗く狭い空間で逃げるために発達したのでしょうか。比較的クロゴキブリと似てる形をしています。
クサアリ亜属の一種
アリヅカコオロギは石の下をひっくり返す以外にも、クサアリの巣でも見ることができます。クサアリは木の根元に巣をつくるのですが、その周りや行列を観察しているとアリにまぎれてアリヅカコオロギを見つけることができます。
クサアリの特徴は簡単に言うと頭でっかちで黒くテカテカした体です。クサアリの巣ではアリヅカコオロギ以外にも、ハネカクシやガの幼虫など様々な好蟻性昆虫を見ることができます。
天気の良い日にはアリをじっくりと眺めていると、面白い発見があるかも知れませんね。
(はかせ)
アリヅカコオロギ属の一種
分 類 / バッタ目 アリヅカコオロギ科 アリヅカコオロギ属
学 名 / Myrmexophilus sp.
体 長 / 2mmほど
クサアリ亜属の一種
分 類 / ハチ目 アリ科 ケアリ属
学 名 / Lasius sp.
体 長 / 4~5mm
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