野生動物を観察する際に「生きもののしわざ」を見つけて、それを「考察」することは、「フィールドワーク」をするうえで、とても重要な作業のひとつです。
「しわざ」とは、生きものがフィールドに残した痕跡のことで、フィールドサインと呼んだりもします。一言に「しわざ」と言っても、その種類はいろいろ。食べ痕(食痕)や足跡、フンや巣などなど……あります。簡単に言えば、しわざは「生きものが、そこに生きていた証」です。
Q.さて、下の画像はいったいだれが残した「しわざ」でしょうか?
Ans. 答えは、春限定「ヤマザクラのつぼみを食べたムササビのしわざ」
冬の雑木林の中を滑空するムササビ
ムササビは「飛膜を広げて夜空を滑空するリスのなかま」で、森にすみ、主に植物を食べて暮らしています。季節を通して「旬の植物」とは言い過ぎですが、春はサクラのつぼみ、夏にはどんぐりの若実、秋には木の実、冬には冬芽、初春にはツバキのつぼみというように、さまざまな植物を食べます。
ムササビが残した「さまざまな植物を食べたしわざ」
ソメイヨシノの冬芽を食べるムササビ
ムササビがかじった枝
ムササビは通勤路とでも言いますか、季節によっておおよその移動ルートが決まっています。なので、林道や道ばたで「しわざ」を見つけたら、夜にその辺りで待機すれば、高い確率でムササビを観察することができるのです。
ちなみに、風雨などで木の枝が落ちていることがあります。「ただ落ちた枝」と「しわざ」を見分けるポイントは、ムササビはリスのなかまなので、するどいノミのような前歯(門歯)をもっています。そのため、落ちた枝の切り口がスパッと切れていれば、ムササビの「しわざ」の可能性大です。
(pöllö=ポッロ)
分 類 / 齧歯目(ネズミ目)リス科 ムササビ属 和 名 / ムササビ
学 名 / Petaurista leucogenys 頭胴長 / 27.2-48.5cm
尾 長 / 28-41.4cm
体 重 / 495-1250g
分 布 / 本州〜九州
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