スギ花粉が飛ぶのを撮影するため、いつものルーティンルートを移動中、ふと、違和感を覚える光景を目にしました。樹上に枯れ葉の残った枝が、鳥の巣のようにコンモリ……。
「あれっ? まさかこんな所にクマ棚がある筈はないよね!?」
違和感を覚えた光景
念のためと思い、双眼鏡を取りだして樹種を確認すると。
「あらら、ヤマグリ(シバグリ)じゃん!」
ツキノワグマの大好物であるクリの木ということは、まさかではなく、ツキノワグマが残した(痕跡・フィールドサイン)、クマ棚の可能性大。
ケモノのしわざとなると、居ても立ってもいられない性分のため、さっそく現場へ行き、他のしわざも見つからないか、確認をすることにしました。
ヤマグリの樹上にあったクマ棚
俯瞰で見たクマ棚。クマ棚は、桟敷や円座、床や座布団などとも呼ばれる
崖を登り、ヤマグリの下まで来ると、ビンゴ!
まさしく、ツキノワグマの代表的なしわざである、クマ棚でした。おそらく、昨年の晩夏から初秋の間にできたもの。
クマ棚とは、クマが樹上で木の実などを食べた際にできる副産物。
枝に枯れ葉が残っているのは、ヤマグリなどの落葉樹の場合、葉っぱがしげり、葉柄と枝との間に仕切り(離層)ができる前(初夏から秋)に折られたため、クマ棚の枝には、葉っぱが残ったままの状態で見つかります。
ヤマグリの樹皮に残されたツキノワグマの爪痕
林床には、手首ほどの太さのヤマグリの枝や殻斗の残骸が落ちている
樹皮には、ガッツリとツキノワグマの爪痕も残っていて、迫力満点。爪痕をよく見ると、大小あるので、このヤマグリを訪れたのは、母子グマだったのかもしれません。
大型哺乳類のしわざを目の当たりにすると、何ともいえない、畏敬の念が込み上げます。
数年前に撮影したツキノワグマに襲われたクロスズメバチの地中巣
数年前、今回クマ棚を見つけた場所から数百メートル先で、クロスズメバチの地中巣を掘り起こした、ツキノワグマの食痕を観察したことがありました。
この辺りには、数年に一度、ツキノワグマが往来しているのかもしれません。
それにしてもケモノのしわざ観察は、心躍るね。
ケモノのしわざにご興味のある方は、4月23日に開催するエコツー「春の森で発見! フィールドサインからのぞき見る野生動物のくらし」にご参加ください!
(pöllö=ポッロ)
分 類 / 食肉目(ネコ目)クマ科 クマ属
和 名 / ニホンツキノワグマ(ツキノワグマ)
学 名 / Ursus thibetanus japonicus
体 長 / 1.1-1.5m
体 重 / 40-150kg
分 布 / 本州・四国
オマケのクマ棚映像
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