飯能の森で出会う、スズメバチという生きもの
- pöllö=ポッロ

- 7月31日
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更新日:8月6日

樹液場を訪れたオオスズメバチ
森や川辺、里山の道を歩いていると、ぶん、と低い羽音が聞こえることがあります。大きな体、黄色や黒のしま模様、力強い飛び方。スズメバチのなかまたちです。
スズメバチというと、「こわい」「刺す」という印象が強いかもしれません。もちろん、巣に近づいたり、刺激したりすれば危険な生きものです。でも、少し距離をとって見てみると、スズメバチたちは森の中で大切な役割をもっています。
花に来て蜜をなめるもの。樹液に集まるもの。ほかの昆虫を狩るもの。巣の中で幼虫を育て、季節とともに大きな社会をつくっていくもの。
スズメバチのなかまは、森の食物連鎖の中にいる捕食者であり、分解や受粉に関わる場面もある、身近で大切な昆虫です。飯能のように、森、川、里山、人のくらしが近くにある場所では、いろいろなスズメバチのなかまに出会うことがあります。
今回は、飯能市周辺で観察できる主なスズメバチ類を紹介します。

オオスズメバチ
日本で見られるスズメバチの中でも、とくに大きな種類です。大きな頭と力強い体、低く響くような羽音には、ほかのハチとはちがう迫力があります。
オオスズメバチは、樹液に集まることも多く、クヌギやコナラの木のまわりで見られることがあります。また、ほかの昆虫を狩ったり、ミツバチの巣を襲ったりすることもあります。森の中では、とても強い捕食者のひとつです。
巣は土の中や木の根元などにつくられることが多く、知らずに近づいてしまうことがあります。出会ったときは、近づかず、静かに距離をとることが大切です。

ヒメスズメバチ
名前に「ヒメ」とつきますが、実際には大きめのスズメバチです。腹部の先が黒っぽく見えることがあり、落ち着いた雰囲気のある姿をしています。
ヒメスズメバチのおもしろいところは、アシナガバチの巣を襲い、その幼虫やさなぎを食べることがあることです。つまり、同じハチのなかまを専門的に狙う、少し変わったくらしをしています。
スズメバチにも、それぞれ得意な食べものや行動があります。ヒメスズメバチを見ると、「スズメバチ」とひとまとめにできない、生きものの多様さを感じます。

コガタスズメバチ
オオスズメバチに似ていますが、名前の通り、やや小型のスズメバチです。とはいえ、近くで見ると十分に大きく、しっかりした存在感があります。
コガタスズメバチは、人家の庭木や公園、林のふちなど、私たちのくらしに近い場所で巣をつくることがあります。春から初夏のころの巣は、とっくりを逆さにしたような独特の形になることがあります。
比較的おとなしいといわれることもありますが、巣に近づけば防衛行動をとります。見かけたときは、ハチそのものだけでなく、近くに巣がないかにも気をつけたい種類です。

モンスズメバチ
モンスズメバチは、体の色合いがやや赤みを帯び、全体に落ち着いた印象のスズメバチです。木のうろや建物のすき間など、閉じた空間に巣をつくることがあります。
スズメバチの多くは昼間によく活動しますが、モンスズメバチは夜に活動することもある種類として知られています。ライトにやってくることもあり、夜の観察で出会うと少しどきっとします。
昼の森だけでなく、夜の森にも、スズメバチたちの時間があります。モンスズメバチは、そんなことを教えてくれる存在です。

キイロスズメバチ
黄色みの強い体色をした、比較的小型のスズメバチです。小さいといっても、動きはすばやく、巣の規模が大きくなることもあります。
キイロスズメバチは、都市部や人家の近くにも適応しやすい種類です。軒下、屋根裏、木の枝など、さまざまな場所に巣をつくることがあります。
働きバチの数が増える夏の終わりから秋にかけては、とくに注意が必要です。身近な場所で出会いやすいからこそ、見つけたときには距離をとり、刺激しないことが大切です。

チャイロスズメバチ
チャイロスズメバチは、名前の通り、茶色っぽい体色をしたスズメバチです。黄色と黒のしま模様が目立つ種類とは少しちがい、渋い雰囲気があります。
このハチの大きな特徴は、ほかのスズメバチの巣を利用する「社会寄生」をすることです。女王バチが別のスズメバチの巣に入り込み、その巣を乗っ取るようにして自分の子を育てます。
スズメバチの社会の中に、さらに別のスズメバチが入り込む。そう聞くと、少しドラマのようですが、自然の中ではこうした複雑な関係も起きています。チャイロスズメバチに出会うと、昆虫の世界の奥深さを感じます。

クロスズメバチ
クロスズメバチは、オオスズメバチやキイロスズメバチに比べると小型で、黒と白っぽい模様が印象的なスズメバチです。いわゆる「スズメバチ」と聞いて想像する黄色い姿とは少しちがいます。
地中に巣をつくることが多く、草地や林の中で見られることがあります。小さな昆虫を捕らえたり、花や樹液に来たりしながら、群れでくらしています。
地域によっては「へぼ」などと呼ばれ、昔から人のくらしと関わってきたハチでもあります。身近でありながら、よく見るととても美しい、小さなスズメバチです。
スズメバチは、たしかに注意が必要な生きものです。でも、「危ない」だけで終わらせてしまうと、その生き方の面白さや、森の中での役割は見えにくくなってしまいます。
樹液に集まる虫たちの中にいるスズメバチ。森の中を低く飛んでいくスズメバチ。巣を守り、幼虫を育て、季節の終わりまで社会をつくるスズメバチ。その姿には、ひとつの命としての真剣さがあります。
観察するときは、近づきすぎない。巣をのぞかない。手で払わない。黒い服や強いにおいにも気をつける。そして、ハチが近くに来たら、あわてず静かに離れる。スズメバチを正しく知ることは、こわがりすぎないためでもあり、軽く見ないためでもあります。
飯能の森で出会うスズメバチたちは、ただ人を刺すためにいるのではありません。この場所の生態系の中で、それぞれの役割をもって生きています。少し距離をとって、敬意をもって見る。それが、スズメバチと同じ森を歩くための、いちばん大切な姿勢なのかもしれません。
分 類 / ハチ目 スズメバチ科
和 名 / オオスズメバチ
学 名 / Vespa mandarinia japonica
体 長 / 女王 約40〜45mm、働きバチ 約27〜40mm
出現期 / 4〜11月
分 布 / 北海道〜九州
分 類 / ハチ目 スズメバチ科
和 名 / ヒメスズメバチ
学 名 / Vespa ducalis
体 長 / 女王 約35mm、働きバチ 約25〜35mm
出現期 / 5〜10月
分 布 / 本州〜九州・対馬・屋久島など
分 類 / ハチ目 スズメバチ科
和 名 / コガタスズメバチ
学 名 / Vespa analis
体 長 / 女王 約25〜30mm、働きバチ 約22〜28mm
出現期 / 4〜11月
分 布 / 北海道〜九州・沖縄
分 類 / ハチ目 スズメバチ科
和 名 / モンスズメバチ
学 名 / Vespa crabro
体 長 / 女王 約28〜30mm、働きバチ 約21〜28mm
出現期 / 5〜10月
分 布 / 北海道〜九州
分 類 / ハチ目 スズメバチ科
和 名 / キイロスズメバチ
学 名 / Vespa simillima xanthoptera
体 長 / 女王 約25〜28mm、働きバチ 約17〜24mm
出現期 / 4〜11月
分 布 / 北海道〜九州
分 類 / ハチ目 スズメバチ科
和 名 / チャイロスズメバチ
学 名 / Vespa dybowskii
体 長 / 女王 約27〜30mm、働きバチ 約17〜24mm
出現期 / 5〜10月
分 布 / 北海道〜九州
分 類 / ハチ目 スズメバチ科
和 名 / クロスズメバチ
学 名 / Vespula flaviceps
体 長 / 女王 約15〜18mm、働きバチ 約10〜13mm
出現期 / 4〜11月
分 布 / 北海道〜九州




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