毎年、秋になると、ある部位が奇抜な形状をした植物を見に行ってしまいます。
その植物とは、飯能では河畔の斜面に生えていることの多い「ケンポナシ」です。
ケンポナシ
奇抜な形状の部位とは、「ごつごつぐねぐね」した「果軸」のこと。
ケンポナシは、動物に食べられて種子を運んでもらう「被食散布(動物散布)」ですが、おもしろいのが、他の多くの被食散布植物とは食べさせる部分がちょっと違い、実などを食べてもらうのではなく、花序の軸が花後に肥大した果軸を食べてもらいます。
ケンポナシの果序。肥大して曲がりくねった果軸の先に実がついている
肥大した直後の果軸を食べてみると、シャリシャリとしていてナシっぽい風味があります。
ケンポナシのナシは、この風味から名前につけられました。
肥大した果軸の断面。肥大した直後の果軸はみずみずしい
ケンポナシは英名を、「Raisin Tree」といいます。晩秋、肥大した果軸は樹上で乾燥すると、名前の通りレーズンのような甘い香りを出し、食べると甘みがあり、とても美味。
果軸の先についた実と種子(種子は実の中に3つで1セット)
乾いてドライフルーツになった果軸が枝ごと地面に落ちると、甘い香りに誘われたタヌキやテンなどの哺乳類がやって来て、果軸と一緒に実(種子)を食べていきます。
晩秋から春にかけて、タヌキのためフン場やテンのサインポスト(目立つところにしたフン)を調べると、フンの中から種子がたくさん見つかるので、ケンポナシは哺乳類に大人気のドライフルーツのようです。
ちなみに人が食べるときには、実を取り除いた果軸だけを食べてしまうので、ケンポナシにとって人は種子を散布しない、ただ食いの役立たずなのかもね。
(pöllö=ポッロ)
分 類 / バラ目 クロウメモドキ科 ケンポナシ属
和 名 / ケンポナシ(玄圃梨)
学 名 / Hovenia dulcis
花 期 / 6-7月
生活型 / 落葉高木
分 布 / 北海道(奥尻島)〜九州
Comments